2013年12月29日

事実を摘示するだけで名誉毀損罪は成立します

友人とおいしいラーメン屋に並んでいるときに名誉毀損の話になり、事実を摘示して名誉を毀損したら名誉毀損罪なんだよ~といったらカルチャーショックを受けていました。説明を端折ったおかげで「事実は事実だろ?何で事実を言って犯罪になるわけ?何言ってんのコイツ?」的な顔をされたので、弁明。

刑法230条です。公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した人は、その事実の有無に関わらず、3年以下の懲役・禁錮 or 50万円以下の罰金です。

ここにいう「名誉」とは人の社会的評価のことで、「ほほー、あんたすごいな!」という評判みたいなものが典型です。別に特別な人ではなくても、誰でも名誉を持っています。

ある事実を公然と摘示して、誰かの社会的評価を下げたら名誉毀損罪です。その事実が真実であったなら犯罪とならない場合もありますけど、その要件はかなり厳しいです(刑法230条の2参照)。事実を摘示した行為が公共の利害に関する事実に関係するもので、事実摘示行為の目的がもっぱら公益を図ることにあって、なおかつ、事実が真実であった場合に限り、名誉毀損罪とはなりません。これにあたるのは相手が公人である場合がほとんどだと思います。相手が一般人である場合は、これでセーフになるのはまずないでしょう。

何で公然と事実を摘示してはいけないのかというと、個人の名誉を守るためです。誰だって名誉は大事なんです。

不倫の証拠として不倫現場を録音・録画したという話がネットには転がっています。仮に不倫の決定的証拠をゲットしたとして、「何処々々の誰それは不倫している!これが証拠の動画だ!」といった具合に全世界に公開したら名誉毀損罪です。知り合いに証拠の動画を送りつけてもアウトです。お怒りはとてもよく分かりますけれども、それは金で解決するしかありません。不倫現場を公開して社会的に抹殺したくなるほど腸が煮えくり返っても、やっていいことと悪いことがあるわけです。告訴されれば法的に制裁を受けます。

「公然と」でなければ構いません。正面から不倫の証拠を突きつければよろしい。お前不倫したな?もう絶交だ、と。

刑法の教科書ではこういったことが書いてありますが、読んでもなかなか納得できないと思います。

文句があるなら面と向かって当事者だけの場で言えということです。名誉毀損罪は個人の名誉を保護法益とする犯罪ですけど、社会的法益の保護の側面もちょびっとあるように思います。

今年は以上です。

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